Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
恐らく千鶴子と矢代は自分と真紀子の行ってしまったようなことさえ、未来のこととして旅の気持ちをつづけているのにちがいあるまい。昨日の朝はここのこの鏡に千鶴子は顔を映し、
「それで、どうなさるおつもり?」
と自分に真紀子のことを訊ねたのを久慈は思い出したりしたが、昨日と変ったこの一大変化が特別変った気持ちも起させず、むしろ平凡に静かなのが彼には物足りぬほどだった。
食事をすませてから久慈は真紀子と銀行へ金を取り出しに行って、帰途チュイレリイの画館へセザンヌの展覧会を観にいった。画館をめぐった緑の濃い樹の蔭から朝の噴水が正しい姿で光っていた。まだ日光に暖まりかねた大理石の石階を踏みつつ、久慈はこれからセザンヌを見るのだと思うと、真新しいカラアを開くような豊かな喜びを感じて第一室に立った。
あまり広くもない三室を連ねたばかりの会場に人は相当這入っていたが、それもうるさいほどではなかった。見渡したところ皆誰も帽子をとり声も立てず、お詣りのように静静としているのが久慈には先ず気持ちが良かった。絵も百四十点もあった。彼は一つずつ見て廻らず、中央に立ってざっと一度見廻してから、惜しむように最初にもどって虱潰しに覗き始めた。