Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
しかし、まったくそうかもしれない。」
とふと久慈は呟いた。
「あなた今までそんなことを考えてらっしたのね。」
と真紀子は、それで初めてあなたが分ったというような、久慈には意外に見えるほど満足した微笑だった。
「でも、ほんとうに面白いもの。あの頂上で分れて水の落ちる瞬間のところに、ある一線があるでしょう。あの線のところを見ていると、君の姿までぼんやりあそこへ浮き上って来るんだからな。なかなか楽しいよ。」
「そういうものかしら。男の方は。」
と真紀子は云って暫く噴水を眺めていてから、「分らないわ。」と小声で呟いたが、何か久慈と共通のものを感じたらしい赧らめた顔で身を彼の方へ傾け、そわそわした風情ながらも、またそれを急いでもみ消す苦心だった。
「さア、いきましようか。」
「もう少しいよう。この噴水だって、フランス革命のときの血の中から噴き上っているようなものだからな。」
チュイレリイ宮殿の跡といっても、今は画館と浮草の巻き返った高い金色の門より残ってはおらず、プラターンの繁みの下で子供たちが白い股を露わしているだけの公園だったが、しかし、久慈は跳ね散る水玉の絶え間ない運動をうっとりと見つづけているうちに、そこに見える唐草の金色の門から噴き上った革命の騒擾が、まただんだんと思い描かれて来るのだった。