Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
」
と押しつけた。矢代は久慈の恰好という意味を一寸考え、まだ千鶴子との間の具体的な恰好は何もつけていない自分だと思った。しかし、それはもう幾度となく考えてしまった後の事でもあり、外国での無理な恰好を急いでつける工夫の愚かなことを、賢さとすることに賛成し難いものを感じるのだった。これは歯を喰いしばるような矢代の痛さだったが、日本へ帰っても今の気持ちが切れるものなら、それならいっそ今のうちに切ってしまうのも、二人のためと思うことに変りはなかった。いずれにせよ、矢代は、ここで自分たちの中に起っていることのすべては夢遊病者の夢中での出来事だと思った。
もしこの夢が変らぬ事実だったなら、日本へ帰っても変らぬだろうと思い、せめてそれが事実であってくれと祈る気持ちで何事も云わず、千鶴子と別れてゆこうと試みる、ある実証に臨んだような決心とも云うべきものが強かった。恐らく帰れば久慈のいうように、千鶴子と断ち切られてしまうような事があるかもしれぬと怖れはしても、何ものにも代え難いものを失うなら、それならそれは自分の身の錆びであり、自分の受けるべき罰だと思った。
しかし、そんなに突き詰めたような考えだったにも拘らず、矢代は最後の一点で千鶴子を信じて疑わなかった。