Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
それは丁度ぼッと燃え上るような早さで、道路の両側の群衆の上に感応していくと、矢代の前後左右から次ぎ次ぎに、「あれだッ。」とか、「来たぞ。」というような声が漲り起って来たが、そのうちに首に銀狐を巻いた紺色の盛装した若い貴婦人が、ただ一人前方の群衆の中から飛び出て来て、そして、近づいて来た自動車の方へ真直ぐに馳けつけた。と見る間に、一時にどっと両側から真白なカラアの高い群衆が道路のその一点へ向い、波の打ち合うような速度で雪崩れのぼった。警官隊はマントを振り立てて群衆をとめようと焦っても忽ち人波に押し揉まれた。
矢代は傍の篠懸の街路樹を楯にとって動かなかった。彼は久慈の方を見ていると、塩野と久慈は、打ち上がって来る高いカラアの潮に奔弄されたような様子で、周章てて後へ戻ろうとして引き返して来た。しかし、そのときはもう、後からも同様の群衆の雪崩れが襲って来ていた。二人は横向きに傾きかかって沈んだり浮いたりした。それでも塩野は動揺する中でまだカメラのシャッタを切っているらしかった。
赤旗を立てた先頭の自動車の後から、二台三台と同様の車が陸続とくり込んで来た。