Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
しかし、矢代家は城主の守る運命として、滅んで後に野に隠れたといえ、滝川家のごとく新しい城主の臣となる決意の出る筈はなかった。しかし、最上家同様に永く徳川時代を野人として隠忍して来たこの矢代家の悲しみは、どういう偶然か明治となって、ともかく最上家の永い悲しみの末の家臣である滝川家の娘と結びついたのだった。
このことは、滝川家が士族であり矢代家が平民であるという、階級的な観点から見た場合に起る、ある無益有害な観念を無くさせる上に都合が良かった。それのみか、他の地と違い何より保守を尊ぶ気風を持った土地の滝川家としては旧士族を誇りとしている以上、当然に仰がねばならぬ旧主最上家の位置に、矢代家もまた同様位置する理由により、自家の士族も矢代家の平民に対しては、ある観念が逆に起り得べき立場にもあった。
「それじゃ矢代家、どうして士族じゃありませんの。」
と矢代の母が良人に不平を洩した失敗のときも、父としては、妻の家が旧主最上家と共に滅ぶべき所を、浮き上った一時期の明るさに対して、それを暗さとして指摘し得られる場合だったが、恐らく子の矢代の身の上を思い、それも父は差しひかえたのにちがいない。