Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
久慈の方にはロンドンの兄の所へ行くという千鶴子がいた。今一方の組の中には、ウィーンの良人の傍へ行くという、早坂真紀子が中心になっていた。矢代は上海に半ヵ月ばかり滞在してから、スマトラその他の南洋の港港を一ヵ月ほど廻り、シンガポールから初めて久慈たちの船に乗船したため、これらの二組のどちらでもなく中立派の態度をとって自由にしていたが、一度び船がスエズに入港してカイロ行の団体を募集したときから、この二派の関係は乱れて来た。
船がスエズからポートサイドまで出る一昼夜の間に、カイロ行の団体は陸路沙漠を横切りカイロへ出て、ピラミッドを見物してからポートサイドに廻っている船まで、汽車で追っつかねばならぬのである。随ってこの急がしい旅には二派の反目など誰も考えていられる閑はなかった。いよいよカイロ行の一団は、千鶴子の組も真紀子の組も呉越同舟で三台の自動車に分乗した。
そのとき矢代は最後に遅れて自動車に乗ろうとするとどの自動車にも席がなかった。矢代はうろうろしながら席を覗いているうちに一台の自動車から急に久慈が飛び降り、「こちらへいらっしゃい。ここが空いていますから。