Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
もし千鶴子がいま外国へ逃げて行くようなことになったら、いったい自分にとって、ギリシアや幾何学や、宗教などというものは何事かと矢代は思った。しかし、その危険は自分に迫っていると見ても良かった。
「日本に昔、幾何学はあったのですか。」
と槙三はまた子供らしい真顔で訊ねた。
矢代は要らざることを云ったものだと自分を後悔するのだった。彼はストーブに赤松の薪を投げ込みながら、それでも、今は料理の来る間の手持無沙汰を、話で何んとか揉み消していなければならなかった。
「ありましたとも、日本の古い祠の本体は幣帛ですからね。幣帛という一枚の白紙は、幾ら切っていっても無限に切れて下へ下へと降りてゆく幾何学ですよ。同時にまたあれは日本人の平和な祈りですね。つまり、僕らの国の中心の思想は、そういう宇宙の美しさを信じ示しているんだと思うのです。今の僕らが何も知らずに国家国家と云っていたのは、先祖の考えた宇宙を国家などと小さく翻訳語で云っているので、おかしなものだ。」
「ふむ。」
と云ったまま槙三はまた黙ってしまった。脇道を振り返ることの出来ない純情な槙三に、一層火力をたてて薪を投げ込むような結果になって来た、このひとときが、何んとなく重くるしく矢代には苦痛だった。