Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
これは、わたしもときどきこの年になって、自分もこれで憎い人間になっているのかもしれぬと、考え込んだりしますからね。」
久木男爵のそう云うのを矢代は聞くともなく聞きつつ、思わず、自分にとっては事実そうだと忘れていた灯台の光りをまた見詰めた。しかし、怨もうにも怨めぬこの憎さは、天から転がり下った宿命の糸に見え、少女のか細い肩の間から徐ろに廻って来る光りの瞬きも、ますます父の最後の笑顔をほのかに浮き出す灯火のように、愁いを含んで射しこもって来るのだった。
「ね、ほんとにお父さん、あんなに喜んで死んだんですもの。」
父の亡骸を抱いた矢代の傍で、そんなに喜んだ母の顔も彼の眼から離れなかった。しかし、それもこれも起ったすべてのことは誰も知らず、ただ彼の胸中で人知れず燃え上っては、やがて自分の死とともに消えてゆく喜び悲しみの焔であろう。
矢代はつい湿って来た眼を人に見られたくはなかったので、室内から視線を外に反らせるように心がけた。そして、出来るなら自分ひとり音立てず、この場から脱けて帰りたいと思ったが、一同の話の続きがまだ切れず、その機会も容易に来なかった。そのうちに立って席を空けていた東野が戻って来ると、