Classiques japonais avec furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lisez 日本の怪談(二) (かにのかい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 80 664 caractères · 171 écrans
「そうじゃない、この二三日の潮時に、多くの鮭は皆登るから、それでも罪業が軽くなるわけじゃ」
「お坊さんは、この二三日の潮時に、鮭の登ると云うことを、どうして知っているのじゃ」
「そんなことは、私には、ちゃんと判っている」
「それじゃ私の睨みも当っているのじゃ」と、漁師は喜んだが、旅僧の詞も気にかからない事はない。
「だから二三日はやめるが好いだろう」
漁師は黙っていた。旅僧はやっと蕎麦切を喫いはじめた。
「殺生の報いは、恐ろしいものじゃろうか」と漁師は聞いた。
「恐ろしいとも、一家一門が畜生道に墜ちて、来世は犬畜生に生れて来る」
旅僧はいつの間にか蕎麦を喫い終って、椀を前に置いていた。漁師は鮭も欲しかったが、旅僧の詞も恐ろしかった。
「じゃ、二三日は見合すとしようか」
「それが好い、それが好い、出家は悪いことは云わない」
漁師は旅僧の詞を守って、二三日は鮭網を入れまいと定めてしまった。旅僧は御馳走になった礼を云って、法衣の袖をひらひらさして帰って往った。
「お前さんは、じゃ、明日は、やめるつもり」と、女房は冷笑うような声で云った。
「お坊さんが、ああ云うからな」と、漁師は女房の顔を見た。