Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lisez 日本婦道記 (にほんふどうき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 885 caractères · 27 écrans
一
一
「あたしの主人はこんど酒井さまのお馬脇に出世したそうですよ」
厚い大きな唇がすばらしく早く動いて、調子の狂った楽器のような、ひどく嗄れた声が止めどもなく迸しり出た。
「……お馬脇といえば武士なら本陣の旗もとですからね、足軽としてはこれより名誉なことはありませんよ、なにしろ酒井さまから直にお声をかけて頂けるんですから、その刀を取れとか沓を持てとか、そういったようにね、それからまた銃隊をさがらせろ、なんという命令を伝えにもゆきます、そういうときは酒井さまのお口まねだから、銃隊のお旗がしらに向っても銃隊さがれとどなりつけるんですよ、――銃隊さがれ、ふだんならそんな口を利けばそれこそお咎めものでしょう、けれどもお口まねなんだから誰もなんとも云うわけにはいかないんですとさ」
「だってそういう軍令はお使番という役があって、お側の武士がつとめるのだと聞いていますよ」これもなかなか負けていない気質らしい、前の女を凌ぐ舌鋒でやりこめにかかった、「黒地四半の布に『使』と書いた指物を持つのが徳川さまお旗もとの使番のきまりです、そのほかの者がどうしたって軍令を伝えることはできません、それはもうたしかなことですよ」