Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
はるのしゅぜんじ
春の修善寺
岡本 綺堂
Lisez 春の修善寺 (はるのしゅぜんじ) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 749 caractères · 8 écrans
に見えたのが、今もありありと私の眼に残っている。ところが、今度かさねて来てみると、堂はいつの間には取払われてしまって、懐しい紫の色はもう尋ねるよすがもなかった。なんの掩いをも有たない古い墓は、新しい大きい石の柱に囲まれていた。色々の新しい建物が丘の中腹まで犇々と押つめて来て、そのなかには遊芸稽古所などという看板も見えた。
頼家公の墳墓の領域がだんだんと狭まってゆくのは、町がだんだんに繁昌してゆくしるしである。むらさきの古い色を懐しがる私は、町の運命になんの交渉も有たない、一個の旅人に過ぎない。十年前にくらべると、町は著るしく賑やかになった。多くの旅館は新築をしたのもある。建増しをしたのもある。温泉倶楽部も出来た、劇場も出来た。こうして年ごとに発展してゆくこの町のまん中にさまよって、むかしの紫を偲んでいる一個の貧しい旅人のあることを、町の人たちは決して眼にも留めないであろう。わたしは冷い墓と向い合ってしばらく黙って立っていた。
それでも墓のまえには三束の線香が供えられて、その消えかかった灰が霜柱のあつい土の上に薄白くこぼれていた。日あたりが悪いので、黒い落葉がそこらに凍り着いていた。