Classiques japonais avec furigana
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きそおんたけのりょうめん
木曽御嶽の両面
吉江 喬松
Lisez 木曽御嶽の両面 (きそおんたけのりょうめん) de 吉江 喬松 (よしえたかまつ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 819 caractères · 32 écrans
日影が隠れて、青葉がざわつき出す、川を隔てて前の谿が急に暗くなる、と雷鳴が聞え出して、川の瀬音がこれに響くかと思うと、大粒の雨が灰のような砂塵の上を叩いて落ち出した。馬は※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)き出す、馭者は絆を引きしめる。谿が鳴り山が響いて風が一過したかと思うと、大雨が襲って来た。止まるべき家もないので、馬車は雨を衝いてひた走りに走る。晴天つづきの後とて雨具の用意がない。屋根から洩れ、正面から吹き込む。日除けの幕を一面に引廻わして防いでも、吹き込む雨にびしょ濡れに濡れる。
不意に馬車が止ったと思うと、何か連りに話し合う声が聞える。――出抜けに引廻した幕を開けて顔を突き出した男がある。見ると八字の髯が第一に目に付く、頭髪が伸びて、太い眉毛の下には大きな眼が凄く光っている。紺絣の洗洒したのが太い筋張った腕にからまっている。ぎょろぎょろと馬車の中の一人一人に目を止めて見たが、別に何と言うでもなく、そのままぐっと幕を引いて下りてしまった。日除けの隙から覗いて見ると、紺絣の下に雪袴といってこの辺の農夫が着けている紺木綿の袴ようなものを穿いて傘をさしている。