Classiques japonais avec furigana
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とうじょうき
東上記
寺田 寅彦
Lisez 東上記 (とうじょうき) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 356 caractères · 17 écrans
あたりようやく薄暗く工夫体の男甲走りたる声張り上げて歌い出せば商人の娘堪えかねてキヽと笑う。長良川木曽川いつの間にか越えて清洲と云うに、この次は名古屋よと身支度する間に電燈の蒼白き光曇れる空に映じ、はやさらばと一行に別れてプラットフォームに下り立つ。丸文へと思いしが知らぬ家も興あるべしと停車場前の丸万と云うに入る。二階の一室狭けれども今宵はゆるやかに寝るべしと思えば船中の窮屈さ蒸暑さにくらべて中々に心安かり。浴後の茶漬も快く、窓によれば驟雨沛然としてトタン屋根を伝う点滴の音すゞしく、電燈の光地上にうつりて電車の往きかう音も騒がしからず。こうなれば宿帳つけに来し男の濡れ髪かき分けたるも涼しく、隣室にチリンと鳴るコップの音も涼しく、向うの室の欄干に倚りし女の白き浴衣も涼しげなり。昨日よりの疲れ一時に洗い去られしようにてからだのび/\となる。手を拍ちて床をのべさせ横になれば新しき浴衣の肌さわりも快く、隣室の話声遠きように聞えし後は魂いずこへか飛んで藻ぬけの殻となり電燈消しに来し事もいつか知らず。円かなる夢百里の外に飛んで眼覚むれば有明の絹燈蚊帳の外に朧に、時計を見れば早や五時なり。