Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
びわのはな
枇杷の花
永井 荷風
Lisez 枇杷の花 (びわのはな) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 769 caractères · 6 écrans
顔を洗う水のつめたさが、一朝ごとに身に沁みて、いよいよつめたくなって来る頃である。昼過に何か少し取込んだ用でもしていると日の短くなったことが際立って思い知られるころである。暦を見て俄にその年の残った日数をかぞえて見たりするころである。菊の花は既に萎れ山茶花も大方は散って、曇った日の夕方など、急に吹起る風の音がいかにも木枯らしく思われてくる頃である。梢に高く一つ二つ取り残された柿の実も乾きしなびて、霜に染ったその葉さえ大抵は落ちてしまうころである。百舌や鵯の声、藪鶯の笹啼ももうめずらしくはない。この時節に枇杷の花がさく。
枇杷の花は純白ではない。その大さもその色も麦の粒でも寄せたように、枝の先に叢生する大きな葉の間に咲くので、遠くから見ると、蕾とも木の芽とも見分けがつかないほど、目に立たない花である。八ツ手の花よりも更に見栄えのしない花である。
わたくしの家の塀際に一株の枇杷がある。
大正九年庚申の五月末、築地から引越して来た時であった。台所の窓の下に、いかなる木、いかなる草の芽ばえともわからぬものが二、三本、芥を掃寄せた湿った土の中から生えているのを見た。