Classiques japonais avec furigana
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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
Lisez 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 933 caractères · 27 écrans
「妾なんだか気味が悪い」
これが彼女の本心であった。二月三月経つ中に、彼女は見違える程気高くなった。
地上のあらゆる生物の中、人間ほど境遇に順応し、生活を変え得るものはない。で、お杉もこの頃では、全く旗本のお嬢様として、暮らして行くことが出来るようになった。
そうして初恋にさえ捉えられた。
主計の奥方の弟にあたる、旗本の次男力石三之丞、これが初恋の相手であった。三之丞は青年二十二歳、北辰一刀流の開祖たる、千葉周作の弟子であった。毎日のように三之丞は、主計方へ遊びに来た。その中に醸されたのであった。
今こそ旗本のお嬢様ではあるが、元は盛り場の茶屋女、男の肌こそ知らなかったが、お杉は決して初心ではなかった。男の心を引き付けるコツは、遺憾ない迄に心得ていた。
美貌は江戸で第一番、気品は旗本のお嬢様、それで心は茶屋女、これがお杉の本態であった。そういう女が初恋を得て、男へ通って行くのであった。どんな男の鉄石心でも、とろけざるを得ないだろう。一方三之丞は情熱家、家庭の風儀が厳しかったので、悪所へ通ったことがない。どっちかと云えば剣道自慢、無骨者の方へ近かった。