Classiques japonais avec furigana
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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
Lisez 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 933 caractères · 27 écrans
と一人の侍が、吾妻橋の方からやって来た。深編笠を冠っていた。憂いありそうに俯向いていた。まさに二人は擦れ違おうとした。
「待て」と侍は声を掛けた。
「何でえ」と小男は足を止めた。
「連れはないか? 女の連れは?」
「いらざるお世話だ、こん畜生」
小男は勇敢に毒吐いた。
「片眼で傴僂のこの俺を、馬鹿にしようって云うんだな。誰だと思う鬼小僧だ!」
「何、鬼小僧? それは何だ?」
「うん、昔は手品師さ。だが今じゃア形学者だ! 紙鳶堂主人平賀源内これが俺らのお師匠さんだ。手前なんかにゃア解るめえが、形学と云うなア形而学問だ! 一名科学って云うやつだ。阿蘭陀仕込みの西洋手品! 世間の奴らはこんなように云う。もっと馬鹿な奴は吉利支丹だと云う。ふん、みんな違ってらい! 本草学にエレキテル、機械学に解剖学、物理に化学に地理天文、人事百般から森羅万象、宇宙を究める学問だア! もっとも馬鹿野郎の眼から見たら、手品吉利支丹に見えるかもしれねえ。……おお、侍それはそうと、お前さん一体何者だね?」
深編笠の侍は、それには返辞をしなかった。彼は懐中へ手をやった。取り出したのは小判であった。