Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Lisez 桑の木物語 (くわのきものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 815 caractères · 79 écrans
「――見て下さい」
悠二郎は聞えぬ態で、こう云って正篤のほうへ口をあけてみせた。正篤もおれのはどうだと口をあけた。二人は遠い日の向島の出来事を思いだし、互いの黒く染まった口を見ながら、両方でいっしょに笑いだした。――これはおろかしい所業である、三十にもなる男が二人、そんな子供だましなことをしなくてもいいではないか。慥かにそうだ、慥かにこれはおろかしい光景である。しかし二人にはそうして話すほかに、言葉を交わすことができないのである、桑の実は古い思い出でかれらを結び、桑の枝葉は今、あまりに明らさまな感動を隠して呉れる。それなしには、二人とももっと恥ずかしい、やりきれない場面を演じなければならないだろう。
「漸く暇が出来るようになった」
正篤は次の木に移りながら云った。
「これからは時々来るがいい」
「舟仙へもおいで下さるときがまいりましょうか」
悠二郎も次の木へ移ってゆく、お互いに顔を見られたくないらしい、繁った葉の、暗がりの中から正篤が明るい調子でこう答えた。
「うんゆこう、いつか、もっとさきになって身に暇が出来たら、――おれは長命するぞ悠二郎」
「私がそう申上げた筈です」