Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もりのようき

森の妖姫

小川 未明

Lisez 森の妖姫 (もりのようき) de 小川 未明 (おがわみめい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 457 caractères · 5 écrans

Aozora Bunko

道行く旅人、野に分け入る百姓等は相戒めて、決して琵琶池の辺りに近かないという。

もはや春もくれて、雲白き南信濃路に夏の眺めを賞せんものと、青年画家の一人は画筆を携えて、この深山路に迷いに迷い入った。緑滴るばかりの森影に、この妖姫の住める美しの池は漣を立てて、寂として声なき自然の万象をこの鏡中に映じている。青年は池の畔りに腰を下して、名もなき花の、咲き満つる、青草の上にカンバスを構えた。

都を立出でて、既に六十日、今や盛夏を告げ顔なる、蝉や、蜩の声などが聞える。それにしてもこの艶々しい池の畔の草木の緑葉の眺めかな。赤々として熱そうな、日入の影が彼方の松林に照りつけると、蜩の声は深山の渓間で鳴くのである。もはや帰るべき時は来った。

やおら青年は起ち上らんとする時、悲しき、嬉しき歌の声は杜の彼方に聞える。彼は耳を澄まして、眤と彼方を見詰めた。空色の衣物に緋の袴を着て、房々とした黒髪を垂れたる美女は梢の繁みを払って、我が方を差し覗いているように思われる。はっとして青年は心臓の血潮を躍らすと、もはやその姿は歌と共に消え失せてしまった。

次の日も青年は、写生に出掛けた。