Classiques japonais avec furigana
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もりのくらきよる
森の暗き夜
小川 未明
Lisez 森の暗き夜 (もりのくらきよる) de 小川 未明 (おがわみめい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 725 caractères · 18 écrans
月が、深い、深い、葉の繁みを分けて奥深く入り込む、そのまた後を追いかけて第二の風が入って行く。それらの風が、この清新な葉の褥の中に追い廻り、追い駆け、狂って、再び奥の繁みから、左に抜け右に抜け、ある者は、どっと森を突き貫けて、更に月の青白く照る野を掠めて、どこかに行ってしまう。その風の音が自分に接吻を求める叫びのように聞える。
女は、月を見て空想に耽った。青い月の光りは障子の破れから射して、棚に乗っている白い土器を晒していた。誰がいつ、そこに土器を置いたか? ただ物を言わぬ土器が、青白く彩られて、黙っていた。
女は、慌しげに仕事に取り縋る。風の音、森の囁き、小鳥の巣を求める声、月は、次第に明るくなった。女は、遠くで、水の流れる音を聞きつけた。その流れは、湧き出る泉の音である。月下に白く銀を砕いて、緑の草を分けて、走っている水の音である。女は、未だ曾つてかかる流れを、この森の中に見出したことがなかった。しばらくその水音に耳を傾けて、仕事をやめていた。心は、水音と共に連なり、流れに乗って暗い、森の下、赤い花、白い花の蔭をくぐって遂に森に出た。遥々と夢を見る気持で、どことなく流れて行く、高い塔、赤い煉瓦造りの家、光る海……それらを見ることが出来た。