Classiques japonais avec furigana
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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
Lisez 棺桶の花嫁 (かんおけのはなよめ) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 42 845 caractères · 86 écrans
ミチミは手拭を、カルメンのように頭髪の上に被って、その端を長くたらしていた。そして見覚えのある単衣を着ていた。それは九月一日、彼と一緒に家を出て、電車どおりにゆくまでにしげしげ見た見覚えのある模様の単衣だった。そしてその単衣の襟は茶褐色に汚れ、そのはだけた襟の間からは、砂埃りに色のついた――だがムッチリした可愛いい胸の膨らみが、すこしばかり覗いていた。ミチミも随分苦労したらしい。
「ミチミ――」
と、杜はお千を引離して駆けよろうとしたが、この時お千はまた両腕を彼の頸にまわして、力まかせにぶら下ってきた。離すどころの騒ぎではなかった。
ミチミは唇を、ワナワナ慄わせていた。その下ぶくれの唇を、やがてツーンと前につきだしたかと思うと、
「莫迦――」
と只一言。叩きつけるように云った。
「これミチミ、何をいうんだ――」
ミチミはツと身を引いたかと思うと、彼女のうしろに立っていた二十歳あまりの、すこぶる長身の青年の、オープンの襟に手をかけて、何ごとか訴えるような姿勢をとった。
その男はフンフンと、彼女の話を聞いているようであったが、やがて杜の方に向って錐のように鋭い嫌悪の眼眸を強く射かけると、長い腕をまわして、ミチミの身体を自分の逞しい肩の方へ引きよせ、そしてグッと抱きしめた。