Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くすのきのはなし
楠の話
豊島 与志雄
Lisez 楠の話 (くすのきのはなし) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 820 caractères · 22 écrans
父は私の姿を見ると一寸眉を寄せて、「只今。」と私が云う間も与えないでこう怒鳴った。
「お前は奥に引込んでいなさい!」
父の声は鋭くまた震えていた。私は驚いて其処に立ち竦んだが、父はふり返りもしなかった。そして縁側から下に下りて、向うへ行った。村の人達がその後に続いた。
私は奥にかけ込んだ。母は長火鉢の側にじっと坐っていた。私を見上げた顔には殆んど血の気がなかった。ただ眼ばかり輝いていた。そして火鉢の中には火もなかった。それを見ると私は胸が一杯になった。そのまま母の膝に身を投げると、母は強く私を抱きしめてくれた。
私達は長い間そのままじっとしていた。母は殆んど息さえも止ったかと思われるほどだった。私を抱きしめていてくれる胸も両腕も冷たかった。私は母の胸に顔を押し当てたままいつのまにか涙を流していた。母はいつまでたっても何とも云わなかった。
母は私の背中に垂れている頭を時々挙げた。そしてその度毎に溜息をついた。私はそっと下からその様子を窺った。母は柱時計を見てるのだった。一、二分間毎に柱時計を見ては溜息をついた。そしてやがて云った。
「さあ、お母さんは一寸用がありますから。