Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

くすのきのはなし

楠の話

豊島 与志雄

Lisez 楠の話 (くすのきのはなし) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 820 caractères · 22 écrans

Aozora Bunko

広い屋敷の隅々までを歩いていると、私の心は全く解放されたのびのびした自由さを感じた。竹藪の中に珍らしい花を見出したり、倉の影に意外な大きい果樹を見出したりした。ただ家跡の広場だけは余り好まなかった。其処は何となく物佗びしかった。そして楠の木影で、長い間、篠竹を切って弓を拵えたりなんかして遊んだ。

その日も私は、父母が心痛していることについては殆んど無関心であった。種々な出来事に対して少しも注意を払わないで、ただ自分一人の気持ちだけを追うのは、私の幼年時代の癖だった。(父母に対して後悔と自責との念を私が後になって覚えたのは、この点についてが最も強かった。)然しその癖のために、晩になって父母から一家の事情を聞かされた時も、私は全く平気だった。

その晩聞いたことを私は今よく覚えていない。また実際それは当時の私には余りに難解なことだった。そして結局私が知ったことは、父が非常な負債を持っていること、都の叔父と村のIとKとが万事を整理しつつあること、元の家を壊して運んだのも債権者の仕業だったこと、などだった。どうしてそういう窮境に立ち至ったかは私には分らなかった。