Classiques japonais avec furigana
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ならのわかば
楢の若葉
佐藤 垢石
Lisez 楢の若葉 (ならのわかば) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 927 caractères · 4 écrans
北の方、上越国境の山々はまだ冬の姿であるらしい。
私は、利根川の崖の坂路を登りながら、はるばると奥山の残雪を眺めた。そして、ぽつぽつと、父の跡を踏んで歩いた。
雑木林へ差しかかった時、父は、
『これをごらん』
こう言って私に、楢の枝を指した。何のことであろうと思って私は、父の指す楢の小枝へ眼をやったのである。楢の枝には、澁皮が綻びたばかりの若芽が、わずかに薄緑の若葉をのぞかせていた。
『この楢の芽を見な。この芽が樺色の澁皮を落として、天宝銭くらいの大きさの葉に育つと、遠い海の方から若鮎がのぼってくるんだよ』
こう、父は想い出深そうに、私に説明するのであった。そして、それは毎年、五月の端午のお節句が過ぎた頃である。その頃になると、河原の上に川千鳥の鳴き叫ぶ声を聞くのだが、川千鳥は下総の海の方から、鮎の群れを追いながら空を翔ってくるのだ。であるから、川千鳥が流れの上に、仮住まいして水面に、何ものかを狙うように羽搏きをするのを見たら、若鮎の群れは、もう丸い小石のならぶ瀬際をひたのぼりに、上流へのぼっていると思ってよろしい。と、細々と話してくれた。
二人は、いつの間にか路傍の草に、腰をおろしていたのである。