Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Lisez 榎物語 (えのきものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 519 caractères · 67 écrans

Aozora Bunko

大榎の幹にすがりついて、烈風のため吹きとばされそうになる躯を支えながら、国吉のところへゆくことだけを考えていた。家を出るときに頭からかぶった弟の雨合羽は、風にひき剥がされてもうなかったし、はいていた筈の草履も、結い付けた紐が切れたのか、片方ははだしになっていた。着ている物はもとより、頭から水浸しで、叩きつける雨は滝のように、顔や手足を打ち、肌を伝って流れるのが感じられた。

「あたし大丈夫よ、国さん」とさわは声に出して云った、「負けるもんですか、どんなことをしてでもあなたのところへいってよ」

風の唸りと雨の音を凌いで、なにか非常に複雑な、幅のひろがりと巨大な量感のある物音が、裏の谷あいのほうで聞え、それがすさまじい速度で近よって来た。土の崩壊する音、石と石のぶつかりあう音、木の折れる音、その他さまざまの音が入混って、譬えようもなく大きな厚みと重みをもった絶壁となり、それらがいちじに崩れかかり、殺到して来るような感じであった。

さわは榎にかじりついたまま、なにが起こったのかを見ようとした。けれどもなにも見えなかった。飛礫のように叩きつける雨、悲鳴をあげて吹き荒れる烈風のほかには、殆んど一尺先の物をみわけることもできないのだ。