Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 078 caractères · 285 écrans

Aozora Bunko

そこで安芸は式部に抗議をし、式部は逆に安芸の不当を鳴らした。この争いは四年余日にわたるもので、現在では郡奉行の山崎平太左衛門が預かり、国老による裁決を待つことになっていた。

安芸は右のゆくたてを詳しく記したうえこんどは「堪忍なりがたい」と書いていた。境論を預かった山崎平太左衛門は、安芸の親族で外従弟に当る。式部が紛争を山崎に預けたのは、山崎が郡奉行だということより、安芸の親族であるという点に眼をつけたからで、結果の利不利にかかわらず、山崎と安芸との関係を逆用しようとする意図によるものである。

――むろん式部ひとりの知恵ではあるまい。

うしろに一ノ関がいる、と安芸は書いていた。初めの境論のときから、一ノ関が式部を煽動していたのだ。式部宗倫は、隠居した綱宗の異母兄に当るから、「一門」であることの単純な自尊心を刺戟すれば、自分の思うままに動くことを、一ノ関の兵部はよく知っている、したがって、こんどまた譲歩するとすれば、式部はさらに領境を侵すに相違ない。

――いまこそ覚悟すべきときだ。

手紙の文字はそこから力強く、太くなっていた。この境論は、伊達家中に紛争を起こそうという、兵部の工作の一環であり、こんどは山崎平太左衛門を巻き込むことによって、涌谷を窮地に追い詰めようとするものである。