Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 078 caractères · 285 écrans
「大藩取潰しの手筈をあかしたのですから、仙台六十万石は安泰であろうと思います」
「慥かにそうみるか」
「確言はできません」と甲斐は慎重に云った、「しかし、久世侯は明らかに動揺しておられましたので、おそらく他の老中に相談されることでしょう、そこでもう一つ、頼みになるのは酒井侯の立場です」
「酒井侯の立場とは」
「侯はいま天下第一の威勢をもち、将軍家さえも侯を憚られると聞いています、こういうぬきん出た威勢には、必ず対立する勢力が生ずるもので、閣老の中にも酒井侯打倒の機をうかがっている者があるに相違ないと思います」
安芸はあぐらをかいて坐っていたが、その左右に開いた膝頭を袴の上から大きく掴み、唇をひきむすんで、じっと前方を見まもった。
「おれは死ぬ覚悟で来た」とやがて安芸が云った、「そのため涌谷で戒名も付けたし、今朝、麻布を出るときにも、死ぬ覚悟だということを留守の者に告げて来た」
甲斐はそっと低頭した。
「この機をしてはならない」と安芸は続けた、「酒井侯に対立する勢力があって、そのため評定が中途半端にされたり、ごまかして遷延されたりしてはならない、ここはわれらが一命を投げだして正面から酒井侯と対決し、確実に禍の根を断ち切るときだ、船岡にもその覚悟でいてもらいたいと思う」