Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 145 078 caractères · 285 écrans

Aozora Bunko

六郎兵衛が振返り、その男が「石川だ、石川兵庫介だ」と叫んだ。すると、六郎兵衛がびくっと身をちぢめ、逃げ場を捜すように左右を見た。そこへもう一人が、島田市蔵だ、逃げられはしないぞ、と云い、村山喜兵衛に会釈して、この人間を貰っていいか、と訊いた。喜兵衛は甲斐を見た。

「どうぞ」と甲斐が答えた。

六郎兵衛が振返って、原田どの、と助けを求めるように呼びかけ、甲斐は、済んだら湯島へ来るがよい、と答えた。

「お願いです、原田どの」と六郎兵衛が叫び、二人の待が、左右から彼の腕を押えた。それを見て、甲斐は駕籠の戸を閉めながら、「やれ」と云った。

駕籠が動きだしたとき、うしろで、石川兵庫介と名のった男が、じたばたするな、とどなるのが聞えた。

「今日こそ貸したものを取る、おれのこの腕に代るものをな、歩け」

六郎兵衛の声はもう聞えなかった。

――いろいろな事のある日だ。

と甲斐は思った。かれらの問答がなにを意味するか、石川、島田と名のる二人が、六郎兵衛をどうしようとするのか、甲斐にはまったくわからなかったし、むろん知りたいとも思わなかった。

――おかしな男だ。

と甲斐は心のなかで思った。