Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 148 519 caractères · 296 écrans

Aozora Bunko

渡辺は「うん」と呻いた。七兵衛は肩の傷を押えながら客間のまん中に立っていた。

そこへ三人の若侍と、一人の若い女が走って来た。侍たちは廊下の左から、――女は奥のほうから走って来て、客間の前で立竦んだ。

「騒ぐな、上意討だ」

金兵衛が云った。彼は渡辺九郎左衛門が死んだのを慥かめてから、客間のほうへ出て来た。

「あとから検視が来る、それまで死躰に手を付けてはならない、家の中もそのまま、慎しんで待っておれ」

女が叫び声をあげた。

金兵衛が女を見た。女は十八九歳の、小柄な躯つきで、勝ち気らしい、だが美しい顔だちをしていた。女は金兵衛の脇を走りぬけ、渡辺の死躰のところへいって、死躰にとり縋った。そして声をあげて泣きだした。

「あれはなに者だ」と金兵衛が訊いた。

三人の若侍たちはすぐには答えなかった。しかしようやく、その中の一人が云った。

「側女のみやという者です」

金兵衛は刀を拭きながら七兵衛を見た。

「大丈夫、浅手だ」と七兵衛が云った。そして、二人はたち去った。

同じ夜の、ほぼ同じ時刻。

伊達家の桜田上屋敷内にある畑与右衛門の住居へ、三人の訪問者があった。畑は納戸役(禄高不明)で夫婦の間に宇乃という十三歳の娘と、虎之助という六歳の男子があった。