Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
そり
橇
黒島 伝治
Lisez 橇 (そり) de 黒島 伝治 (くろしまでんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 663 caractères · 24 écrans
彼は、シベリヤへ来るまで胸が悪くはなかった。肺尖の呼吸音は澄んで、一つの雑音も聞えたことはなかった。それが、雪の中で冬を過し、夏、道路に棄てられた馬糞が乾燥してほこりになり、空中にとびまわる、それを呼吸しているうちに、いつのまにか、肉が落ち、咳が出るようになってしまった。気候が悪いのだ。その間、一年半ばかりのうちに彼は、ロシア人を殺し、ついにはまた自分も殺された幾人かの同年兵を目撃していた。彼自身も人を殺したことがあった。唇を曲げて泣き出しそうな顔をしている蒼白い青年だった。赭いひげが僅かばかり生えかけていた。自分の前に倒れているその男を見ると、別に憎くもなければ、恨を持っているのでもないことが、始めて自覚された。それが不思議なことのように思われた。そして、こういうことは、自分の意志に反して、何者かに促されてやっているのだ。――ひそかに、そう感じたものだ。
嗄れた、そこらあたりにひびき渡るような声で喋っていた吉原が、木村の方に向いて、
「君はいい口実があるよ。――病気だと云って診断を受けろよ。そうすりゃ、今日、行かなくてもすむじゃないか。」
「血でも咯くようにならなけりゃみてくれないよ。