Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
貰おうとは――、梶は、貴い滴りのようにアンナの囁きを素直に胸で受けとめて悔いなかった。イレーネは喇叭にしつこく迫りよられていながらも、ひそかに、ときどき恨みを蒼(あお)く放つ眼で梶の方を睨(にら)んだ。こちらの方はこれで良いと諦(あきら)めていた矢さきの折だっただけに、梶はまだ断ち切れぬ糸も感じて、ふと躓(つまづ)くよろめきに似た思いもするのだった。
アンナには喇叭の囁く意味も聞きとれるものであろうか、さらにイレーネには頓着(とんちゃく)せず梶を揺すぶり流す視線をつづけた。何か擦れかわり入りかわる暖寒の気苦労で、ちょうどホールも最後の湧(わ)き立ちに近づき、崩れようとしているときだった。
「それでは帰りましょう」
とヨハンは巧みな見切りのころ合いを失わず立ち上った。時計を見ると三時を少し過ぎていた。アンナは梶の手を握りながら出口まで二人を送って来たが、ついにイレーネの姿は見えなかった。街には人通りは少なかったが、夜中の三時過ぎだというときに、ここではもう太陽が赤赤と照っていた。
ホテルの前まで来たとき、ヨハンは明日は最後の日だから朝の十一時に来ると云って、二人は別れた。