Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
こう梶の思っているときである。突然ツァラアは、
「もう良識は左翼以外にはない。それは決った」
と低くひとり呟(つぶや)くように云って葡萄酒のコップを上げた。
梶はその言葉を聞くとある古い言葉を耳にしたときのような無表情な自分の心を見るのだった。十年前には梶はそれと同様な言葉でさんざん人人から突き刺された。今またその傷口を吹かれても通り脱ける風穴の身にすでに開いている日本人の梶である。しかし、梶はこの風穴を塞(ふさ)ぎとめては尽く呼吸の断ち切れてしまう日本人の肉体を今さら不思議な物として眺め始めた。ここには何か人人のまだ発見しない完成された日本特有の知性があるのにちがいない。まことにそれは義理人情という世界に類例のない認識秩序の美しさの中にあるに相違ないと梶は思った。しかし、それにしてもかつてスイスにいるとき世の義理人情を踏み砕く無思想の発会式を行ったツァラアが、今その行為に内容を吹き与えたがごとき左翼の思想に新しさを発見したことは、再び完全に世の義理人情を否定する現実上の発会式を行ったようなものであった。つまり彼にあっては、彼の超現実主義と云う知性への反抗が一層反抗の度を強めた超現実主義になったまでだ。