Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
だが、果して、自分は自分のためにのみ、この苦痛を噛み殺しているのだろうか。
「それはそうだ、俺はお前の云うように、俺のために何事も忍耐しているのにちがいない。しかしだ、俺が俺のために忍耐していると云うことは、一体誰故(だれゆえ)にこんなことをしていなければ、ならないんだ。俺はお前さえいなければ、こんな馬鹿な動物園の真似(まね)はしていたくないんだ。そこをしていると云うのは、誰のためだ。お前以外の俺のためだとでも云うのか。馬鹿馬鹿しい」
こう云う夜になると、妻の熱は定(きま)って九度近くまで昇り出した。彼は一本の理論を鮮明にしたために、氷嚢(ひょうのう)の口を、開けたり閉めたり、夜通ししなければならなかった。
しかし、なお彼は自分の休息する理由の説明を明瞭(めいりょう)にするために、この懲りるべき理由の整理を、殆(ほとん)ど日日し続けなければならなかった。彼は食うためと、病人を養うためとに別室で仕事をした。すると、彼女は、また檻の中の理論を持ち出して彼を攻めたてて来るのである。
「あなたは、私の傍をどうしてそう離れたいんでしょう。今日はたった三度よりこの部屋へ来て下さらないんですもの。