Classiques japonais avec furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 117 781 caractères · 235 écrans
また、それを判読してみようという気にもならなかった。彼の眼には、どこの家にもある掛軸や額以上のものには、それが映らなかったのである。もっとも、何度もこの部屋に出入りしているうちに、額にある最初の二字だけは、いつの間にか彼の眼にとまるようになった。それは、「白鳥」と書いてあるらしく、会の名称と深い関係があるように思えて来たからであった。
「あれは、白鳥と読むんでしょう。」
と、ある日、彼はちょうど来合せていた佐野という四年の生徒にたずねた。
「そうだよ。君、今まで知らんかったのか。」
次郎は頭をかきながら、
「こないだから、そうじゃないかと思ってたんですが……」
「なあんだ、僕たちの会の名は、あの字にちなんでつけてあるんじゃないか。」
「僕、そう思ったから、きいてみたんです。」
「すると、君の兄さん、まだそれを君に教えてなかったんだね。」
「教わりません。」
「案外、君の兄さんものんきだなあ。今日、帰ったら、よく教わっとけよ、あの意味を。」
佐野は、そう言って、読みかけていた本の頁をめくった。
次郎は、しかし、もう帰るまで辛抱が出来なかった。彼は一心に額を見つめて判読しようとつとめた。