Classiques japonais avec furigana
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こおりぐらのにかい
氷蔵の二階
宮本 百合子
Lisez 氷蔵の二階 (こおりぐらのにかい) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 201 caractères · 37 écrans
――まあ黙って見ていらっしゃい」
出来上るにつれ、房は大きい髪を持てあました。
「本当にいやあよ、私。私じゃあない人間みたいだわよ、これじゃ」
「どれ」
志野は、素ばしこく前に廻って検査した。
「そんなことあるもんですか! トテ、シャンになったわよ」
遊んでいると、階段を登って来る下駄の音がした。
「おや――、芦沢さん、出ていたのかしら」
然し、下駄の音は隣に行かず、志野の扉の前で止った。
「――今日は」
櫛を持ったまま耳を立てていた志野は声を聞くと、ひどく迷惑な顔した。
「――何の用があるんだろう」
「私なら、かまわないことよ」
「いいのよ」
志野は、ずかずか取繕わない風で立って行った。
「浅田さん――いますか」
志野は、体で入口をふさぐようにして扉(ドアー)をあけた。
「――今日は――いつ来たの」
「さっき」
「……今日は駄目よ」
「誰かいるの」
「お友達――お房さんて――」
ききとれない低声で、二人は何か囁き合った。
「――だって――そんなこと駄目よ、ね、だから……」
甘えたように高まった志野の声が、再びひそひそと沈む。やがて、
「じゃ、さようなら」
勢よく戸を閉め、戻って来ると、志野は照れかくしのように、舌を出した。