Classiques japonais avec furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lisez 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 541 caractères · 78 écrans
この物音に、驚破と奥で起直って、早や身構をしたと見える――慌しい耳にも、なおがったりと戸棚の前の怪しげな響がまた聞えたのに、堪りかねて主人を呼ぶと――向うへ、突当りの縁が折曲った処に、ぼうと射していた灯が動いて、直ぐに台附の洋燈を手にした、浴衣の胸のはだかった、扱帯のずるずるとある医師が、右を曲って、正面へ。
開放した障子を洩れて、だらりと裾を引いた萌黄の蚊帳を横にして、廊下の八分目ぐらいな処で、
「便所か。」
と云う、髯、口許が明々として、洋燈を翳す。
この明で、小松原は水浸しになったほど、汗びっしょりの、我ながら萎垂れた、腰の据らぬ、へとへとになった形を認めたが、医学士はかつて一年志願兵でもあったから、武備も且つある、こんな時の頼母しさ。顔を見ると、蘇生った心地で、
「やあ。」と掛けた声が勢なく中途で掠れて、
「夜更けに恐縮、」
とやっと根こそぎに室を離れた。……扉を後ざまに突放せば、ここが当館の関門、来診者の出入口で、建附に気を注けてあるそうで、刎返って、ズーンと閉る。
と突出された体にしょんぼり立って、
「どうも、何だ、夜夜中、」
医師は亭主関白といった足取、深更に及んでも、夜中でも、その段は一切頓着なく、どしどしと廊下を踏んで、やがて対向になる時、傍の玄関の壁越に凄じい鼾を聞いて、