Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぬまふじん

沼夫人

泉 鏡花

Lisez 沼夫人 (ぬまふじん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 541 caractères · 78 écrans

Aozora Bunko

八

「壮だ、壮だ。」

と莞爾する。

顔色が、ぐっすり寝込んだ処を、今ので呼覚されて、眠いに迷惑らしい様子もないので、

「どうも気の毒です。酷い目に逢ってね。」

といささか落着く。

医師は立はだかりつつ、

「どうした、蚊軍の襲来かい。」

なかなか、こんな事を解釈する余裕はなくって、

「ええ、」

といかにも気が利かない。

「蚊に城を破られたかよ。」

「そこどころか。」

対手の余り暢気なのが、この際怨めしく思われた。

「この中は大変だ。」

「大変だ?」

「何か来たんだ。」

「何、入って来たか、」

と洋燈を上げて、扉の上を、ぐいと仰ぐ。

「がたがた遣ってる。」

小松原は、ずうっと医師に身を寄せる、と目を返して、今度はその体をじろじろ視めて、

「震えてるね、君は。」

八

「どうだい、心持は。もう爽快したろう。」

主人の医師は、奥座敷の蚊帳の中に、胡坐して、枕許の煙草盆を引寄せた。

「こういう時は、医師の友達は頼母しかろう。ちと処方外の療治だがね、同じ葡萄酒でも薬局で喇叭を極めると、何となく難有味が違って、自ら精神が爽快になります。しかし怯えたっけ、ははは。」

と髯を捻って、冴々しい。

蚊がぶうんと唸って、歯切もどこかでする。