Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なきむしこぞう
泣虫小僧
林 芙美子
Lisez 泣虫小僧 (なきむしこぞう) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 34 906 caractères · 70 écrans
啓吉には三和土の道が、まるで河のように広く見える。
「さあさ、自動車よ、礼ちゃん眠っちゃ駄目よ、重いじゃないのさア」
啓吉が見上げると、母親の腕の中で、礼子が頭をがくんとおとしていた。耳朶に生毛が光っていて、唇が花のように薄紅く濡れている。啓吉とは似ても似つかない程、母親に似て愛らしかった。――貞子は、小奇麗な自動車を止めた。ふわふわしたクッションに腰を掛けると、半洋袴の啓吉は、泥に汚れた自分の脚を、母親に気取られないようにしては、唾でそっとしめした。
「いいお天気ねえ、運転手さん! 横浜までドライブしたら、どの位で行くの?」
髪を奇麗に分けた、衿足の白い運転手が、
「四五円でしょうね」
と、いった。
「そう、安いものね」
金もない癖に、貞子は飛んでもないおひゃらかしをよく言うのであったが、いまも、片方の手は袂へ入れて、心の中で、とぼしい財布の中から、一つ二つ三つ四つと穴のあいた拾銭玉を数えて、残りは、電車で帰る切符代がやっとだとわかると、先きは先きといった気持ちで、走る町を眺めながら、どんな口上で啓吉をあずけたものかと、もうそれが億劫で仕方がなかったのだ。