Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

Lisez 海に生くる人々 (うみにいくるひとびと) de 葉山 嘉樹 (はやまよしき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 161 305 caractères · 321 écrans

Aozora Bunko

それにしても、この船長は何という冷酷、残忍なやつだろう。わずか四マイルや五マイルより離れていないのに、その最後を見届けようともしないとは。自分の悦楽のためにはこの船長はおれたちの生命を、いつでも鱶の前に投げてやるだろうに。おれは、その沈没船に代わってでも、また、この船員たちのためにも、船長とたたかう時が必ず来ると信ずる」と、波田は考えにふけった。

難破船はますます近づいた。日は暮れたけれども、まだ夕明りである。船は、今ならば、もっと難破船へ近づくことができるのであった。が、わが、勇敢な万寿丸は船員全体の希望にもかかわらず、船長の一言によって、冷ややかに姉妹の死を見捨てて去ることになった。そして、本船には、救助不能の信号が揚げられた。相手へ知らすためのでなく、乗組船員をごまかし、同時に海事日誌をごまかすための。

実際、この時暴化はだんだん凪いで来たのであった。船員は一時間前の勇敢なる船長の行動を不審に思うのであった。

そのかわいい小柄な船は四十五度以上五十度近く傾いて、今にもそのまま、沈み行きそうに見えた。そして人はどこにも見えなかった。甲板の上は見事に掃除されて、その掃除手の怒濤は、わずかに甲板のすみに凍りついて残っているのみであった。