Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

けれども、今、正隆は変になり、信子夫人は、彼に対する愛を失っているのを見ると、彼等の離婚を考えることは、決して彼女にとって、単純な、残念さ、ではなかった。歓びではない。それは勿論である。が、一種の漠然とした、恢復の快感、希望ともいうべきものが、認め得ないほど微かながら、彼女の胸の底の底に、人知れず動いたのである。

若し、信子夫人を失うことが、彼、正隆にとって、取返しのつかない生活の滅亡、愛の破滅だと知ったら、彼のために盲目になり得る未亡人は、逃げようとする女性も、なお引据えて止めたかも知れない。けれども、彼女は、自分の愛に、少くも多大の威力を認めていたことだけは明瞭である。あちらで失われた愛は、この、自分の愛で満されるものであり、その満される愛が、やがて、正隆の生活を取戻すかも知れないことを、思ったのは確である。そこで、未亡人は、信子夫人に対しては、親切に満ち、理解に満ちた姑として、彼女の美と、技倆とを、寛大な自由に解放し得たのである。

それからの懶(ものう)い、単調な十六年間。

恐るべき十六年を、正隆は、何の躊躇もなく母親に見捨てられた正房と共に、母未亡人の陰に隠れて、日の目の差さない人世の裏に、黴のように生え続けた。