Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

けれども、人の好い、何方(どちら)かといえば単純な副島氏は、正隆の、辛辣な、神経的な顔に面と向って相対すと、いつも、云いたいことを云い出せないような、不安と圧迫とに押えつけられた。

どんなに元気よく、大きな声で快活にものを云いかけようと決心はしていても、彼の顔を見るや否や、このよき副島氏の計画は崩れてしまう。忽ちのうちに、正隆と同じような陰気さと暗さとに染められる彼は、まるで、正隆と同様な感情の所有者のような口調で、

「どうですか?」

と、意味をなさない断片的な言葉を吐き出してしまうのである。

副島氏の、この挨拶を受ける毎に、正隆は同じように意味をなさない、微笑を返礼にした。時には、

「有難う」

と云う。

そう云いながら、彼は心の中に、「またおきまりの、どうですか、か!」と呟きながら、苦笑をするのである。

皮肉な気分で、表面は、一片の義理に見えるこの言葉を噛み捨てながらも、正隆の淋しい、荒涼たる心は、事実に於ては、どれほどの温みを感じていたか分らなかった。ただ、彼は、それを示すのが厭なのである。何だこんなもの、という表情をしていたいのだ。けれども、西日に照らされると、まるで茶色の風船玉に、小指でちょいちょい眼鼻を付けたような副島氏の表情は、何の毒も持っていないようにさえ思われる時がある。