Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

一時に勃発した激情の浪に乗って、我も他人(ひと)もなく荒れ狂っていた間は、まだよかった。然し、次第に酔は醒め、目が覚め、或る程度まで鎮まった正隆の心の前に現れた現実は、ひどいものであった。ほんとに、ひどい。生きるには、辛いほどの世界である。

一度でも、朗らかな希望の明るみに身を置いた正隆にとって、忘れようとしていた過去の追憶を一新して、今日に甦らせたばかりでなく、互に力を加え合って、彼の絶望を一層大きなものにする今の疑惑は、彼自身の力では逃れ得ない煉獄のようにさえ見えて来たのである。

K県での忘れ難い印象を、或は一種の病的(ハルシネーション)な幻想だったかも知れないと、彼自らに思わせていたものは、正隆の生活に与えられた、新たな幸福の力であった。

強調された現在の色調に、知らず知らず過去を薄めていた彼は、今、その頼む現在の破滅によって、俄に、過去を筒抜けに見るようになって来た。遠のいて、ぼんやりとしていた思い出が、一時にカッと鮮明な力強いものになって彼の面前に迫って来る。そして、あの時と、今との連続となっている僅か二三年間の光明は、却ってそれが明るいために、余計、左右の闇を濃くすることにほか役立たないのである。