Classiques japonais avec furigana
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たにさんだい
渓三題
木暮 理太郎
Lisez 渓三題 (たにさんだい) de 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 066 caractères · 12 écrans
東北の山地には殊にそれが多い。其中で黒部峡谷は、早くから登山者の注目する所となっただけに、非常な危険と困難とにも拘らず、熱心なる渓谷の憧憬者に依りて、其大部分は探ることを得たのである。
五、六年前、私は初めて黒部川を仙人谷まで遡った記事を書いたことがある、あれを読まれた諸君は既に承知されていることと思うが、この峡谷で最も目を駭かすものは、何よりも其岩壁の途方もなく素晴らしいことである。黒部別山の大タテガビンや奥鐘山の絶壁のように、他に類例を認められないようなものは別としても、五、六十米から百米前後の高さに屹立しているものは、珍らしくないのである。この大小の岩の屏風は、屈曲が甚しく、岸から岸へと溢れる水は岩をこづきながら、怒鳴り立て、喚きちらし、思うさま荒れ狂っているが、或所では声をひそめてすういと流れている。それでいて実は目が眩むほど流れは速いのである。
鐘釣温泉から黒部川を遡ろうとする人は温泉附近で百貫山や名剣山の岩崖をのけ反るようにして眺め、猿飛のあたりで抉り削られた岩磐に水と岩との凄じい闘争の跡を俯瞰し、少なからず心を驚かすであろうが、奥鐘山の削壁を仰いで、其単調な偉大さに今更のように呆れない人は無いであろう。