Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

とせんば

渡舟場

豊島 与志雄

Lisez 渡舟場 (とせんば) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 509 caractères · 24 écrans

Aozora Bunko

東京近くの、或る大きな河の彎曲部に、渡舟場がありました。昔は可なり交通の頻繁な渡舟場でしたが、一粁あまりの川下に、電車が通じ橋が掛ってから、すっかり寂びれてしまいました。附近の農家の人たちが時折利用するだけで、船頭は爺さんだし、舟も古びたものでした。

この渡舟場のそばに、田舎にしては小部屋の多いちょっと洒落た平家がありました。正木の籬をめぐらし、梅の古枝が交叉し、五本の棕櫚が屋根よりも高く葉を拡げていました。昔はこれが、渡舟場の休憩所でもあり、ちょっとした飲食店でもあり、客を宿泊させることもありました。渡舟場が寂びれるにつれて、この家も空家同様になり、船頭の爺さん夫婦が一隅に寝泊りしていました。

ところが、戦争末期、東京が空襲に曝されるようになってから、岩田の母と娘が東京から疎開して来ました。次で、川原一家四人が東京から焼けだされて来ました。終戦後には、中村の息子がやって来ました。年を越してから、支那奥地に出征して殆んど消息不明だった岩田の息子が、ひょっこり帰って来ました。こうして、この家にはぎっしり人がつまりました。

三月中旬、川原一家は北海道へ行くことになりました。