Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こはん

湖畔

久生 十蘭

Lisez 湖畔 (こはん) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 24 180 caractères · 47 écrans

Aozora Bunko

最初の日、陶がボートの中で語った話や身振り、結婚してからのさまざまな邪気ない遊戯、忘れていた細かいことが記憶に甦ってきて、事ごとに涙を絞らせる。

棺は広間に安置した。陶がオルガンを奏いて一人で遊んでいたその部屋である。棺の前には陶が好んでいた秋薔薇の花と博多人形を供えた。思えば、愛らしくもまた純真な妻であった。陶がどれほど優しく、真実で、愛情が深かったか、死なれて見るとそれがよくわかり、それだけに諦められぬ。今にして思えば、陶こそは、この世で真実に俺を愛してくれたたった一人の女だった。俺とても、心から陶を愛していたのだが、未熟な性情が迸出を阻んでいたのに過ぎない。今ならばと言ったッて、陶はもう死んでしまった。おのれの馬鹿がわかッた時には、陶はもうこの世におらぬのである。

棺の前に坐って、滅々と棚曳く線香の煙を見ていると、いかにも今生の別れというような気がして悲しくていたたまれぬ。人のいないところへ行って、思うさま泣いてやろうと思い、庭のつづきから裏の林へ入って行った。

小道の両側には、杉、楢、檜などが繁りに繁って、陽の目を蔽い隠すばかり。啄木鳥の声が樹林に木精し、深山にでもいるような気持がする。