Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Lisez 溺るるもの (おぼるるもの) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 690 caractères · 36 écrans
彼女は長いコートを着て草履をはいて、子供のような足取りで歩いた。
そうしたことで、私の五百円はわけなく無くなっていった。初めは、自分の古い生活の影と共に一挙に溝に投ずるつもりのその金が、ひどく惜しまれた。金が無くなることは、彼女と別れることである。私は愛慾的な未練は更に感じなかったが、彼女のこと――彼女の生涯のことを考えていた。
自分の新生活、それから、愛慾の世界を背負ってる売笑掃、それがいつのまにか、「片岡さん、喜代ちゃん。」と呼び交わす二人の男女になっていた。――能面のような鏡の中の彼女の顔が、私の眼の前にいつも浮んできた。
或る日、彼女は私の顔をじっと見つめていたが、不意に私に飛びついてきた。その時私は、彼女の水荒れのした指先と可愛い爪とを弄んでいた。その私の人差指を、彼女は黙って自分の口の中に持っていった。下顎の糸切歯の隣りに、ぽかりと恐ろしい穴があいていた。私はそれを深い淵のように感じた。
「どうしたんだい。」
「むりやりに引っこ抜いたの。」
その深い淵からくる一種の眩暈みたいなものに、私は打たれた……。
二 或る売笑婦の話
何だか息苦しくって、そして頭の遠い奥を金槌で打たれてるようで、あたしは眼をさました。