Classiques japonais avec furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lisez 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 705 caractères · 173 écrans
」
聴いている千浪の口から、ほっと溜息が洩れる。
この阿弥陀沢は、山ひとつこっちで領主が違う。
それは、田万里だけが受けた災害だった。
狩りに事よせては、人妻、娘を漁りに来る。
さからえば一刀にお手討ち。
さむらいたちは、山家に押し入って金目のものを、手あたり次第に略奪する。――これを御奉納と称して。
山肌に拓かれたわずかの田畑は、自儘に馬蹄に掘りかえされるし、働き手の男は、山人足に狩り出される。その上、何やかやの名目で取り立てられる年貢、高税の数かず――。
土けむりを上げて、風のように馬を飛ばして来ては思う存分荒らし廻って行く出羽守主従だった。
そのあとには、鬼啾と、憤りのなみだと、黙々たる怨恨が累々と横たわり重なってゆく。
「あまりといえばあまりな、殿のお仕打ちでした――。」
と大次郎は語を切って、灯に顔をそむけながら眼を擦った。
「ほんとに、お察し――でも、今までおうち明け下さらなかったことが、なんだかお恨みのようにも――。」
千浪のことばを遮って、法外老人は、
「伝奇稗史の類の暴君にもまさる。いや、さような大名がおるから、民の怨嗟を買うて、人心いよいよ幕府を離れ、葵の影がうすらぐのじゃ。