Classiques japonais avec furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lisez 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 705 caractères · 173 écrans
祖父江出羽は――あれは、藩地は、たしか遠州相良――。」
「は。石高二万八千石、江戸の上屋敷は、神田一番原、御火除地まえにござります。」
そう答える大次郎の顔を、法外はじっと見据えて、
「大次――!」
「は。」
「そちは、なんじゃな。」――と法外先生、ぐっと声を落としてさし覗くように、「復讐を企ておるな、出羽に対して!」
「いや、これは先生のお言葉とも覚えませぬ。」大次郎は、あわてて、「いかに恨みに思えばとて、相手は一藩の主、手前は郷士上りの一武芸者、竜車に刃向う蟷螂のなんとやら、これでは、頭から芝居になりませぬ。あは、あはははは。」
法外老人は、例の、冷やかな眼でにっこりして、
「隠すな、大次郎。」
美しい顔を義憤に燃やして、千浪も傍から、
「おんなの口を挾む場合ではございませんが、及ばぬながらもお懲らしなさるが武士の意地――本懐とやらではないかと思われますけれど。」
血の気が引いて、氷のように澄んだ大次郎の眼に、突然、大粒の涙がきていた。
「わたくしに、姉がひとりございました。ひとつ上で、当時二十一――柴刈り姿が出羽守のお眼にとまって、猟りの人数が下山のとき、お側に召されて引っさらわれました。