Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちちのおもかげ

父の俤

佐藤 垢石

Lisez 父の俤 (ちちのおもかげ) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 948 caractères · 4 écrans

Aozora Bunko

手もとは、まだ暗い。

父は、池の岸に腹這いになって、水底の藻草を叉手で掻きまわしている。餌にする藻蝦を採っているのである。

藻の間を掬った叉手を、父が丘へほおりあげると、私は網の中から小蝦を拾った。藻と芥に濡れたなかに、小さな灰色の蝦がピンピン跳ねている。

母は、かまどの下で火を焚きはじめたらしい。池のあたりまで薪のはねる音が聞こえてくる。昧暗から暁へ移った庭へ、雄鶏が先へ飛び降りて、ククと雌鶏を呼んだ。

初夏とはいうけれど、時によっては水霜も降りるこの頃では、朝の気は私の小さな手に冷たかった。

『もう、行こうよ!』

私は、いくども父を促した。けれど父は、

『待て待て、餌が少ないと心細い――いい子だな』

と、言ってなおも、叉手を忙しく動かして池の水を濁している。

それは私が小学校へ入学して間もない時であったから、七、八歳の頃であったにちがいない。私はそんな小さい時から、父のお供をして若鮎釣りに使う餌採りの相手をさせられた。海から下総の銚子の利根の河口へ入って、長い旅を上州の前橋近くまで続けてくる若鮎の群れは、のぼる途々、淡水にすむ小蝦を好んで餌にするのである。