Classiques japonais avec furigana
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
Lisez 犬田卯短編集二 (いちろうじん) de 犬田 卯 (いぬたしげる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 383 caractères · 103 écrans
たのであった。隣家へ招ばれて行った女房はまだ帰っていなかった。ぴゅうぴゅうと北極からでもやってくるような寒風が、雨戸の隙間から遠慮もなく吹き込んで、子供らは眠りながらもしだいに毬のようにちぢかんでいる。
作造はそういう子供らから掛蒲団を奪うよりは、炉辺の方がまだましだと考えて褞袍のまま起き出し、土間から一束の粗朶を持って来て火を起した。思ったほど魚は捕れなかったが、それでも女房へ三十銭やって、あと「なでしこ」を一つ買うだけは残ったのであった。彼は脚から腰のあたりがややぽかぽかしてくると、新しく煙草へ火をつけた。
「おや、まだ起きていたのかい」裏戸をがらりと引あけて、まるで寒風に追いまくられるように土間へ入って来た女房の顔は、しかし嬉しそうにかがやいていた。
「まさか隣の家なんか違ったもんだ。内祝だなんていっても、折詰ひいたり、正宗一本つけたり……俺ら三十銭じゃ気がひけちまって、早々に帰って来た。」
言いながら彼女は炉辺へ寄って、新聞紙に包んだものを夫の前へ拡げて見せた。
「これ、よっぽどしたっぺよ、かながしらにきんとん、かまぼこ、切ずるめ、羊羹、ひと通り揃ってるもんな。