Classiques japonais avec furigana
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こぶ
犬田卯短編集 一
犬田 卯
Lisez 犬田卯短編集 一 (こぶ) de 犬田 卯 (いぬたしげる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 259 caractères · 96 écrans
」
「しかし……」
「何がしかしだ。この予算に一銭でも無駄があるか。乏しい歳入に対してこれ以上の節約だとかなんだとかが、いったいどうして出来る。」
「出来ないことはないと思う。」
「ないと思う……思ったって出来ないものは出来ない。出来るというんなら、どれ、どこで出来るか、一つ一つ、具体的に説明して見ろ。」
村長は突っ立ち上って、ずいと田辺の席へ迫ろうとする気配を見せた。一瞬、田辺も突っ立ち上ったが、
「それは、その……その……」
瘤の激しい見幕に、彼は頭がくらくらしてしまって、もはや、何をいうべきか、すっかり解らなくなっていた。
「その、その……か。うむ。うむ……」と村長は大きく笑った。それから席につき、言葉を改めて、「他の諸君はどうだね。何か異議があるかね。」
誰も何ともいうのはない。
「なければ裁決したらどうだ」と長老議員が口を挟んだ。
「裁決――異議なし。」
「異議なし」とみんなが言った。
打ちのめされた田辺村議は、しばし顔を上げず、蒼白な薄ぺらい唇をわなわなと震わせていた。
それから一週間ばかりたったある日のこと、田辺は作業服を着て古い帽子をかぶり、下男といっしょに家の裏手の野茶畑で春蒔野菜の種子や隠元豆、ふだん草、山芋などを蒔きつけ、さらに、トマトや南瓜の苗を仕立てるための苗代ごしらえをしていた。